『達人伝~9万里を風に乗り~』が5月16日(火)発売の「漫画アクション」にて完結した。2号連続で「漫画アクション」では『達人伝』企画を掲載したが、「漫画アクションポータル」でも、王欣太先生の仕事場、GONTA STUDIO公開企画を再録する。

 仕事場は京都にあり、窓からは比叡山が見える。近くには美術系の大学があり、画材屋さんも多く、美大のアシスタントも集まりやすい環境だ。ここは2006年に更地を買って欣太先生自ら図面を引いて設計した事務所で、照明から家具から欣太先生の意図が込められている。

 玄関を入ってすぐの1階が、アシスタントの作業スペースで、チーフアシスタントの机の前には本棚が。原稿に目を落とすと他の人からの視線を遮断できるが、上を向くとちょうど本棚の天板に目線が合い、そこに原稿などを置いて話ができるよう、高さが絶妙になっている。本棚も、ほとんどがオーダーメイドで仕事場のサイズや欣太先生の目線などに合わせて作られている。

 現在、月の半分くらいはアシスタントが勤務している。アシスタントは6名で、一人はリモートだが、あとは実際に仕事場に出勤している。アシスタントスペースの奥には食事をとるスペースがあり、キッチンと冷蔵庫も。アシスタントの食事は出前が多いが、自分の食事は自分で作ることもあるそうだ。

 そして階段で2階に上がると、そこが欣太先生の仕事場スペース。背面にはオーダーメイドの本棚にビッシリと資料本などが配置され、机の上は色とりどりの筆記具が並んでいる。欣太先生はトーン作業寸前まではアナログで描き、その原稿をデジタルで取り込んでからトーンを入れている。デビュー当時からスクリーントーンが大嫌いで、薄墨を使っていたという。「なんで俺の絵にシール貼らなあかんねん。版下(印刷前の元になる原稿のこと)作らされてる気になんねん」と語る。

 机の裏側には寝室があり、2階にはシャワーも完備されている。平日はほぼ毎日仕事場に寝泊まりし、休日に自宅に帰るという生活を続けている。「(自宅から仕事場の)25kmの首輪につながれてんのや」と笑うが、『達人伝』の連載が始まったのは2013年。10年の長きにわたって、心血を注いできた作品が、ついに終わる。単行本33巻、34巻は8月28日(月)に同時発売予定。楽しみに待っていてほしい。